■過去の地震を調べて対応できる備えが先決

(市報「コスモス」平成7年8月1日号の特集から)
地震と断層
阪神・淡路大震災で「活断層」ということばが脚光を浴びましたが、阪神・淡路大震災を調査された地震の専門家・角田史雄先生(埼玉大学)の話では「過去に地層と岩盤を切った断層の多くは、固まってしまって動いていない。しかし、中にはおよそ200万年前に動いた証拠のある活断層がある」ということです。45億年という長い地球の歴史の中では、ごく最近の変動ということになり、この活断層は現在でも動く可能性が高いと見られている断層だそうです。
でも、「東京の立川断層は活断層で有名だが、ズレの跡だけが残っている活断層と考えられる」と角田先生はいいます。その根拠に「この断層が動くならば、両側の震動が違うはずだが、立川断層を何回調べても、断層の両側の揺れ方はいつも同じ」ということをあげています。
このように、活断層といっても、どの活断層の下で地震が起こり、どれが地震で動いて地震断層になるかなどは、調べなければならないのが地震研究の現状で、角田先生は「このような状況の中で、どの活断層の下で地震が起こるのかを当てることよりは、(1)過去の地震と活断層との関係(2)地震のときの活断層の揺れ方(3)地下の活断層と地表に現れた地震断層との関係を調べるのが先決」といっています。
阪神・淡路大震災の被害の特徴
神戸の市街地の地下に断層があることは、数十メートルの浅い地質ボーリングで予想されていましたが、現在も人工地震探査や地質ボーリングなどで確認作業が続けられているそうです。
そして角田先生は大震災の原因や特徴をこう話しています。
「阪神・淡路大震災で神戸の地下の断層が動き、地割れで食い違いができた証拠はまったく見つかっていないが、現実に高速道路の橋脚が折れ、ビルが壊れたのだから、つよい地震動があったのは事実。
地下にある断層の真上の地域が強く震動して大きな被害を出した例は、ユーゴスラビアのスコピエ地震や、関東地震にときの震害で研究されている。やや傾いた地下の断層面で地震波が屈折して、ある区域に地震動が集まってしまい、その地域だけが非常に強く揺れると考えられている。
神戸でも、これと同じことが起こったと考えられる。しかし、強い振動だけで神戸や淡路島の震害すべてを説明できない。地盤が液状化して水のように流動しやすくなり、移動したり、滑ったことで起きた強烈な突き上げ強震動のあとに傾いたり、倒れたりしたビルが多い。
このような被害が出たところは、いずれも人工地盤。明治時代は田んぼが広がる田園地帯だった神戸も、丘陵地や台地にあった川や池、縄文時代に海だった低地などを埋め立てて造成地をつくった。ひな段造成地などを含めると、神戸は人工地盤都市ともいえるまちで、阪神・淡路大震災の被害は、人工地盤に集中している」と。
ふじみ野市で予想される地震動
過去に起きたマグニチュード(地震の規模)5以上の地震で、ふじみ野市に最も近い場所で起きたのは、昭和43年に東松山周辺で起きたマグニチュード6.1の埼玉県中部地震です。次ぎに近いのが昭和6年に寄居付近で起きたマグニチュード7.0の西埼玉地震、安政2年に荒川河口でおきたマグニチュード6.9の江戸地震です。
「宇佐美龍夫氏の著書『資料日本被害地震総攪』などで判断すると、ふじみ野市はこれらの地震で震度(揺れの大きさ)が5(強震)〜6(烈震)程度の揺れに見舞われたと考えられる。震源に近い地震では一般的に最初に突き上げられるような強い地震動がくる。当時のふじみ野市では、台地部でカタカタという速くて強い地震動、低地部ではユサユサという大きな揺れが起きたはず。一方、震源の遠い大きな地震では、断層の真上では強く突き上げる地震動があったあと、ヨコ揺れが続く。やわらかい地盤の低地では、しだいに揺れが大きくなって立っていられない。多くの関東地震の報告で、こうした揺れの特徴がわかる」と角田先生はいいます。
では、大地震のとき、ふじみ野市の予想震度はどのくらいでしょうか。
埼玉県の試算では、南側でマグニチュード7〜8クラスの地震が起きたときは震度5〜6、北側でマグニチュード7クラスの地震が起きたときは震度4〜5、東側でマグニチュード7クラスの地震が起きたときは震度5〜6で、台地にくらべて低地の震度が大きく出ています。
ふじみ野市で予想される震害
ふじみ野市から10〜20キロくらいしか離れていない近い区域で、大きな地震が起きたときはどうなるのでしょうか。
角田先生の話では、「激しい突き上げ強震動があり、すべての建物は上に放り上げられたあとに落下するような動きをする。このときに建物自体の重さが加わり、ビルなどの重い建物は、大きな力がかかる下のほうの階が壊れやすくなる」ということです。
阪神・淡路大震災でも、このような強い突き上げ地震動が震源から10キロ以内の神戸市や淡路島北部で観測され、この強振動による被害が目立ったそうです。
震害への対策
これまでの調査では、「台地や低地といった地形・地質の違いによる被害の程度には差はなかったが、土台やカベの強度を計算どおりにつくった家屋は被害が軽かったといえる」と角田先生はいい、次のようなアドバイスをしてくれました。
低地の軟弱地盤や人工造成地などでは、多少にかかわらず土壌の液状化現象が予想される。このようなところでは、ガスや上下水道、電気などのライフラインの補強や、家の敷地内の盛り土、敷地を囲むようなカベなどの強化をする必要がある。
ふじみ野市からやや離れたところで起きる大地震に備え、このような対策をしておくべきだが、特に、低地での大揺れや、台地での速くて強い地震動への対策を重視すべき」と。
地震はなぜおきるのか
《埼玉大学教授角田史雄》
リンゴは、古くなるとしぼんで小さくなり、皮がしわくちゃになります。
地球も冷えて小さくなり、地球の表面は凸凹になり、山の地層もしわのように褶曲(しゅうきょく)します。「地層は横から圧縮されると褶曲をつくるから、地球の表面近くではいつも水平の力が働き、地震を起すのもそうした水平の圧縮力だ」という考えが、つい50年前ごろまでの世界の常識でした。
これが現在では、「地球はプレートという広大な岩盤に覆われ、プレートはつねに地球内部でつくり出されてくる。たとえば、太平洋の真ん中でつくり出されるプレートは、あとから生産されるプレートに押されて日本やアメリカ大陸の方に移動し、ついには、それらの下に沈み込んでいく。このときの無理な沈み込みが、まわりの岩盤との摩擦と、それによる破壊を生じさせ、地震を起す」というプレート説」が、世界の常識といわれています。
しかし、まだ、どこでもこの説に従って地震の予知に成功した例はなく、プレートが本当に動いているのか否かも測定され始めたばかりです。また、地下100キロ以深でのプレートの年齢測定、地下12キロ以深の岩石資料の採取にも人類はまだ成功していません。世界中の科学者がこの説に従って、地震の起こり方を検討中というのが、地震を起す力についての研究の実態といえます。
(市報「コスモス」平成7年8月1日号の特集から)
